工作機械とは?マザーマシンと呼ばれる理由やその役割を解説
あらゆる機械を作る「機械」であることから、「マザーマシン」と呼ばれる工作機械。たくさんのものに囲まれ、便利な生活が送れるのも、この工作機械のおかげと言っても過言ではありません。
産業を根底から支えている工作機械ですが、日常において人々の目に触れることはほとんどありません。そのため、存在自体があまり知られていないのではないでしょうか。
今回はそんな工作機械とはどのような機械なのか、マザーマシンと呼ばれるゆえんと共にご紹介します。
工作機械の定義
前回の「金属加工とは?」の記事で述べた通り、金属を含めたさまざまな種類の材料に「工作(手)を加えて形にする」ことを「加工」と言います。その加工を行うための機械が「工作機械」です。
日本の工業の基本である、日本工業規格(JIS)では、「工作機械」について次のように定義しています。
主として金属の工作物を,切削,研削などによって,又は電気,その他のエネルギーを利用して不要な部分を取り除き,所要の形状に作り上げる機械。
引用元:JIS B 0105
数ある機械の中でも、主に金属を加工する機械のことを「工作機械」と呼ぶわけですね。
マザーマシン(母なる機械)と呼ばれる工作機械
工作機械は、別名「マザーマシン(母なる機械)」と呼ばれます。(その他に「機械の原点」、「母性原理※機械」と呼ばれることもあります)
一体なぜそう呼ばれるのでしょうか?
前回の「金属加工とは?」でも述べましたが、私たちの生活には機械の存在が欠かせません。
身近なもので言うと、「洗濯機」、「冷蔵庫」、「テレビ」、「自動車」など、普段何気なく使っている製品のほとんどが「機械」に分類されます。
機械とは、それぞれに必要な機能を持った「装置」を、組み合わせて作られたもののことを言います。
冷蔵庫を例に挙げると、冷蔵庫は「冷却装置」で作られた冷気を「循環装置」で庫内に循環させて食品を保存する機能を持っています。
したがって冷蔵庫とは、「冷却」、「循環」という機能を持った装置を組み合わせて作られた「機械」ということになります。
機械を作るためには、さまざまな装置を組み合わせる必要がありますが、それらの装置を作るためには、「部品」が必要です。
その部品を作るために使われるのが、工作機械です。
部品がない→装置が作れない→機械が作れない、という構図になるため、「工作機械で作られる部品が機械のすべての始まり」ということになります。これが、工作機械が「マザーマシン」と呼ばれるゆえんです。
※母性原理とは…工作機械において、加工される部品の精度には、使用する機械の精度がそのまま反映されるという特性。つまり、子である部品の精度は、母である機械の精度を越えられないということ。
工作機械は精度が命
工作機械で作られる部品は、日常生活で使う「家電製品」などの小さな部品から、「自動車」などに使われる大きな部品まで、多岐にわたります。
かつては「高性能・高価格」が当たり前だったものも、近年では「高性能・低価格」が求められるようになっています。
これらの製品の性能には、部品一つひとつの精度が大きく関わります。
求められる精度を満たすよう部品を加工できなければ、装置として組み付けた時に、必要な機能を発揮できないことになります。また、効率よく加工しないとコストがかかり、製品の価格が高くなってしまいます。
工作機械に求められているのは、製品の性能に必要な精密で複雑な部品を、正確かつ効率的に加工することで、安価で高精度な部品を作り出せるようにすることなのです。
日本の工作機械は最強?
日本の工作機械業界は、技術、性能、機能などにおいて常に世界のトップクラスにいます。
「ものづくり立国」として世界をリードし、1980年からは、生産額で常に世界トップ3の座を維持し続けてきました。
日本の基幹産業である「自動車」を含め、機械産業が世界のトップに君臨できるのも、日本の工作機械が世界のトップクラスであることが大きな要因でしょう。
また工作機械には、常にその国の非常に高度な最先端技術が投入されています。すなわち、工作機械の分野で世界のトップクラスにいることは、日本の技術力の高さをそのまま示すことになるのです。
日本では、加工の基本である「付加加工」、「成形(変形)加工」、「除去加工」を行う工作機械3種類すべてが製造されています。日本国内で使われているのは当然ですが、世界中に輸出され、各国で活躍しています。
また近年では電子技術などの発展により、単一加工のみならず、「付加加工」+「除去加工」など、1台で複数の加工ができる機械も作られるようになりました。
高松機械工業で製造している工作機械
高松機械工業では、加工基本3種類のうち「除去加工」を行う、「旋盤」という工作機械を製造・販売しています。
高松機械で製造された旋盤は、主に自動車の部品を加工するために使われ、皆さんの身近で豊かな暮らしを支えるために活躍しているのです。
まとめ
今回は「工作機械とは?」と題し、マザーマシンと呼ばれる理由や、産業との関係性についてご紹介してきました。ポイントをまとめると次のようになります。
✓ポイント
- 「工作機械で作られる部品が機械のすべての始まり」になるため、工作機械は別名「マザーマシン」と呼ばれる。
- 「精密で複雑な部品」を、「正確かつ効率的に加工」することで、高精度の部品を安価に加工することが、工作機械の役割である。
- 日本の工作機械は、常に世界トップクラスの実力を誇っている。技術、性能、機能において世界をリードし続け、1980年より生産額で常に世界トップ3の座を守っている。
- 自動車を含めた日本の機械産業が世界でもトップクラスであるのは、日本の工作機械が世界のトップレベルであるため。
- 工作機械には、常にその国の非常に高度な最先端技術が投入されていて、その国の技術力を示している。
次回は、工作機械の中でも高松機械が製造を行っている「旋盤」という機械について、詳しく説明していきたいと思います。